T.言語政策に関する研究

1.深澤博昭(1994)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより1−地域における日本語教育推進の構想」日本語学136 明治書院 pp.7680

1.目的

 国内の地域における日本語教育推進の構想について概観していくこととする。
 

2.従来の日本語教育の性格

 各種日本語教育機関による、中国帰国者、インドシナ難民、技術研修生、ビジネスマン等といった学習者に対するカリキュラムの開発は、来日直後に入る定着センターや研修センター等で実施される短期集中の日本語教育を目的としたものであり、学習者が研修センターを終えて、地域社会へ分散した後の方策は余り取られていなかったのが現状である。

国立国語研究所日本語教育センターにおいても、従来、大学の留学生センター及び留学生別科、日本語学校等に関わる事業が大部分を占めていたが、近年になって、地域の日本語教育にかかわる事業についても実施されるようになってきている。

3.国内の日本語教育の現状

 国内で日本語の学習を希望する外国人が増加している状況の中、日系人等の増加、外国人技能実習制度の展開等を考慮すれば、一層増加することが予想され、各地域において日本語教育をはじめとして、外国人への支援対策を行う必要性が出てきている。

4.地域における日本語教育の現状と性格

 外国人の地方分散化が広がっている中、地域社会においては大都市にあるような日本語教育の専門機関や、日本語教育の経験が豊富なベテランの日本語教員があまりいないのが現状である。最近、地域の国際交流団体やボランティア団体等が日本語教室を開催する等して地域の外国人の支援を行うところが増えているが、明確な方針に基づくものではなく、手探りの状態で行われているところが多い。

5.地域日本語教育モデル事業の内容

 地域の実情は様々であるため、地域の日本語教育の推進体制作りについては、地域が中心となって日本語教育専門家の協力を得ながら、実地する必要があると考えている。

 この場合、外国人のニーズ分析を行うことが当然必要となってくるが、モデル地域においては、地域日本語教育推進委員会を設立して、地域の日本語教育のニーズ調査・問題点分析、地域日本語教育施策の立案及び実施要項の策定等を行うこととしている。具体的な例として、日本語教育に関する基礎的な知識及び技能を身につけてもらうための講習会等の開催や、日本語教育相談員の配置、日本語教育資料の整備等が考えられる。 

2.氏原基余司(1994)「日本の言語政策を考える−文化庁国語課だより2−「ことば」シリーズを紹介する」
日本語学13-7 明治書院 pp.102〜109

1.目的

 「ことば」シリーズの紹介を中心としながら、国語審議会の建議「国語の教育の振興について」の紹介を併せて行うことを通して、「ことば」シリーズが国語施策の一環として、どのような位置づけになっているのかについて理解してもらう。


2.「ことば」シリーズ

21 配布の範囲と発行部数:「ことば」シリーズは毎年解説編、問答編の2冊ずつを作成され、広く
   学校や関係機関等に配布されており、これとは別に大蔵省印刷局から市販用も出され、
   評価をうけている。現在までシリーズ全体の発行 部数は、市販用だけで約180万部となっている
   ことから、いかに広く受け入れられてきたのかが
わか

22 「ことば」シリーズの内容:解説編は、広く関心の持たれていることばに関する問題を取り上げ、そのあり方について解説したものであり、問答編は、具体的な言葉の使い方、書き方、読み方等の問題を取り上げて、一問一答の形式で解説したものである。

23 問答編:取り上げられているのは、「漢語、漢字に関連する問題」、「仮名遣い、その他表記に関連する問題」、「敬語、その他の問題」の3つに分類されている。問答編の答えは、規範を示すよりも、日本語を考えたり話したりする上での参考となるものである。

24 解説編:「ことば」シリーズ40「言葉の教育」の作成に当たって、用意した「作成概要」から解説論文五編の題と内容について紹介すると、以下のとおりである。

@「言葉の教育の意味:言葉の教育が人間にとってどのような意味を持つのかを明らかにする」、A「言葉の教育の歴史:言葉の教育がどのようになされてきたかを分かりやすく解説する」、B「幼児と言葉の教育:早期教育に対して、賛成の意見と反対の意見があるが、どのように受け取ればよいか一般の読者への指針とする」、C「言葉の教育と語彙:最近子供たちの語彙が貧弱になっているという問題について解決法を提案する」、D「国際化と言葉の教育:国際的な場を念頭においた言葉の教育を探る」

3.建議「国語の教育の振興について」

 「ことば」シリーズは、国語審議会の建議「国語の教育の振興について」の趣旨を具体化するための方策の一つとして作成されている。その建議は「国語が平明で的確で、美しく豊かであることを望み、国民全体が国語に対する意識を高め、国語を大切にする精神を養うことが極めて重要であるとの観点から、国民生活の各分野における国語の教育の振興について、その考えをまとめたもの」である。この建議の精神が現在も引き継がれている。

3.浅松絢子(1994)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより3−言葉遣い・情報化・国際社会-国語審議会の動向-」日本語学13-8 明治書院 pp.128〜133

1.目的

 
近年の社会状況の変化によって、国語の乱れが見られるなど国語にも影響をもたらした。このような背景で、国語審議会は国語をめぐる諸問題について議論を行い、報告を出している。ここでは、そういった国語審議会の動向を探る。

2.内容

  1.戦後の国語施策:国語の表記については、戦後、「当用漢字表」、「現代かなづかい」、「当用漢字音訓表」、「当用漢字字体表」などの一連の施策は、文化水準の向上を目指そうとするものであった。その後、改善の必要性が生じ、国語審議会は文部大臣の諮問を受け、いろいろな側面において答申した。それぞれの答申は内容面で、従来の制限的・画一的な傾向が改められ、現代の国語を書き表す場合の目安とされたことである。これらの答申もまた、「送り仮名の付け方」、「常用漢字表」、「現代仮名遣い」、「外来語の表記」として実施され、広く普及していると認められる。 

 2.現代の国語をめぐる諸問題:第十九期国語審議会は社会状況の変化とそれに伴う人々の意識の変化は国語にも様々な影響をもたらしているという認識に基づき、「現代の国語をめぐる諸問題」を報告した。比較的論議が集中した問題として、「@言葉遣いに関すること、A情報化への対応に関すること、B国際社会への対応に関すること、C国語の教育・研究に関すること、D表記に関すること」の5種類16項目を掲げる。 

 3.人々の意識:この報告は一般的に妥当なものと受け止められ、言葉の問題の重要性を認め、国語審議会の今後に期待を寄せるものであった。「国語に関する世論調査」では、74.8% の人が今の国語は乱れていると認識しており、「話し方」、「敬語の使い方」、「あいさつの言葉」が乱れている点の上位にあがった。また、国語の将来のために国や社会に対して、学校での国語教育、家庭や社会での言葉の教育、言葉の使い方についての標準化と普及・啓発を求めていることがわかった。NHKの調査でも、89.3%の人が日本語の乱れを認めているとしているが、しかし、61.1%の人が国に積極的に対策を求めておらず、自然に任せている傾向が見られた。

 4第二十期国語審議会:文部大臣の諮問である「新しい時代に応じた国語施策の在り方について」に対して、国語審議会では第1委員会・第2委員会を設け、第1委員会は「言葉遣いに関すること」、第2委員会は「情報化への対応に関すること」及び「国際社会への対応に関すること」について検討した。検討の結果、実態調査・意識調査を行い、慎重に分析する必要もあるとし、答申は次期(第二十一期)末になるものと見込まれている。

4.深澤博昭(1994)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより4−国内の日本語教育の動向分析」日本語学13-10 明治書院 pp.114119

1.目的

 平成五年十一月一日現在で行った調査結果に基づき、日本語教育の現状分析及び今後の動向について触れることにする

2.日本語教育実施機関について

 日本語教育を実施している機関は、10年前に比べ、3.8倍増加した1143機関となった。内訳を見ると、民間の日本語学校等の教育機関が623機関と最も多く、大学・大学院が403機関、短期大学が65機関、高等専門学校が52機関の順となっている。ビジネスマン、主婦などの一般人や技術研修生を対象とする機関も前年度の調査と比較すると、2.3倍の増となっている。また、地域の国際交流団体やボランティア団体等が開催している日本語教室もかなり増加してきている。 

3.日本語教員について

 日本語教員数は、10年前に比べると、4.8倍増加した11.142人となっている。選任教員が2.637人で、非常勤・兼任が8.505人となっている。文部省の調査研究会は2000年には、日本語教員は現在の約2倍に増加することになると予測している。 

4.日本語学習者について

 国内の日本語学習者数は、10年前に比べて、3.0倍増加した76.940人で過去最高となっている。日本語学習者のうち、その目的が留学生・就学生等の大学教育を前提とする者が41.848人で全体の54.4%を占めており、以下、外国人子弟が12.788人、聴講生・研究生が3.270人、技術研修を目的とする者が2.273人の順となっている。
 前年度の調査と比較すると、ビジネスマンや主婦等の一般成人の日本語学習者が10.204人から16.761人へと64.3%の増となっているということは、わが国の経済的な国際交流活動の進展によるものであると考えられる。一般の成人学習者の増加と伴い、その子弟等も33.3%増加している点が注目される。
 日本語学習者の出身国の順位は、中華人民共和国(24.958人)、韓国(11.981人)、アメリカ(10.034人)、台湾(5.446人)、マレーシア(1.709人)の順になっている。

 前年度と比べて大きな特徴としては、ブラジル出身の日本語学習者が2.7倍、ペルー出身の日本語学習者が2倍に増加している点が注目される。
 日本語学習者の出身国は142カ国に上っており、全体の約7割がアジアの出身者で占められている。 

5 氏原基余司(1994)「日本の言語政策を考える−文化庁国語課だより7−国語施策懇談会」日本語学13-12 明治書院 pp.109117

1.目的

 @.国語施策懇談会開催の趣旨等、A.国語施策懇談会で出された意見の概要、B.左のAの中で、特に「言葉遣いの基準」に関して出された意見を中心に紹介する。
 

2.国語施策懇談会

・開催の趣旨:国語審議会の審議の対象が広がっていく中で、より広範な意見を聞きながら、審議を進めていく必要性 が求められ、「一日国語審議会」の性格を持つ国語施策懇談会を全国4か所で開催することになった。

・審議会との関係:国語施策懇談会は国語審議会に対して、補完的意味合いを持っている。マスコミ、経済界、大学等 研究者、教育現場の代表者などの参加者によって出された意見は次回の審議会において討議資料となっている。

・懇談テーマ:平成5年度の施策懇談のテーマは、@二十期の国語審議会で優先的に審議すべき事項は何か、A審議に 当たっては、どのような点に留意し、かつ、どのような観点から問題を取り上げるべきか、Bその他、国語施策全般 について、どのように考えるべきかの3点であった。

3.施策懇で出された意見の概要

1)一番議論が集中したのは言葉遣いに関することで、特に、言葉遣いの現状についての指摘と国語審議会の
   取り組み方をめぐっての意見が多く出された。

2)国語と国語教育の重要性を社会全体に認識してもらう必要があるとの意見が多かった。
3)マスコミにおける言葉遣いについては、きちんとした言葉を求める指摘が多かった。
4)情報化の問題に関しては、ワープロ等で使われる字体の問題や、情報機器が子供たちの国語能力に与える
   問題に関する意見とその影響についての調査を要望する声があった。

5)国際化の問題に関しては、帰国子女・外国人子女の指導の問題も含め、日本語教育の整備の問題に関する
   意見が多かった。

6)表記の問題に関しては、漢字の使い方においてもっと弾力的な扱いをしていくのが望ましいとの意見など
   が出された。

7)全体を通して、提言の際には調査に基づく現状分析が必要であるとの意見も多かった。

4.「言葉遣いの基準」について

・基準についての意見:「基準を求める声」と「基準を示すべきではないという声」の相反する意見が出されお
 り、最も 重要な論点の1つになっている。

・基準をどうとらえるか:「言葉遣いの基準」の「基準」に指導的なイメージを持つか個人を制約するイメージ
 を持つかすなわち基準の性格をどう捉えるかが問題である。


5.おわりに
「今求められている言葉遣いの能力とは何か」を、言葉遣いの大切さやその理念とともに、整理して提示していくことが必要なのではないだろうか。

6浅松絢子(1995)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより8−美しく豊かな言葉をめざして」日本語学14-1 明治書院 pp.103108

・目的

 文化庁製作のビデオテープシリーズの趣旨、製作の手順、これまで製作した作品やそれらの利用方法などを紹介し、併せてこの事業の問題点や今後のあり方を述べる。


・本ビデオシリーズの趣旨:文化庁では「国語が平明で、的確で、美しく、豊かであることを望み、この際、国民全体が国語に対する意識を高め、国語を大切にする精神を養うことが極めて重要である」との趣旨に基づき、音声・映像効果を活用した視聴覚教材として昭和55年度以来事業の一環として作成・流布している。一作品1520分程度で製作されたビデオテープは都道府県教育委員会経由で、全国のフィルムセンターに送られ、学校教育や社会教育において利用され、評価を受けている。
 

・ビデオシリーズの政策・内容:「美しく豊かな言葉の普及」のためのビデオテープ作成・流布は、文化庁長官の委嘱する学識経験者、教育経験者等からなる企画委員会及び製作委員会の指導の下に作業が行われている。
 内容は、世間一般で広く関心を持たれている、言葉や言葉遣いに関する問題が中心である。ドラマなどの形式を借りて分かりやすく示すことによって、視聴者がそういった問題について考えたり話し合ったりするきっかけあるいは参考となることを狙いとしている。いままで作品化されたテーマは全38種であり、@敬語に関するもの、A場面に応じたやりとりに関するもの、B語句の使い方に関するもの、C発音に関するもの、Dしつけに関するもの、Eその他の計6つの柱から成る枠組みに沿っている。

・今後の問題:(1)「ことば」シリーズに比べ、認知度が低い。アンケートの結果からも存在を知らない人が多いことがわかった。よって、利用状況も活発ではなく、普及・利用の促進の課題が残っている。(2)当ビデオテープの利用にあたって、ビデオテープが整っていない場合や、貸し出しが不可能な場合があったため、苦情があった。今後各都道府県に一箇所、当ビデオの集中保管・貸し出し可能な体制を検討中である。(3)音声言語教育に関するものや方言の豊かさを紹介するもの、古典に親しませるためのものなどの要望が目立っている中、利用者のニーズ、使用実態を把握することが必要である。(4)いかにマルチメディアとしての利点を生かすかという根本的な悩みも今後の課題として残っている。

7.田島弘司(1995)「−文化庁国語課だより10−日本語教育行政の歴史」日本語学143明治書院 pp.100109

1.目的:行政の日本語教育に関して行なった施策が、時代の流れの中でどのように展開されてきたかを紹介する。

2.明治初年から太平洋戦争終結まで

 21 概要:終戦までの日本語教育行政の特徴として、次の2点が挙げられる。国内においては、留学生の受
    け入れに関する施策が中心で、日本語教育の具体的な内容にまで行政が関わっていない。
海外において
    は、植民地政策の一環として「国語教育」が推し進められたが、太平洋戦争開始後に占領した国々で
    は、「日本語教育」として行われた。
 22 国語課の設置とその役割:昭和十五年に国語課が設置されたが、その前の年に開催された「第一回国語
    対策協議会」から「国語ノ調査統一機関設置ノ件」が提言され、国語課を設置する上での根拠とな
    った。以下の3点が当時の国語課の所掌事務である。

@国語ノ調査ニ関スルコトA日本語教科用ノ編輯ニ関スルコトB国語審議会ニ関スルコト

3.終戦から今日まで

31   概観:戦後日本語学習者の急増と多様化が見られた。戦後の日本語教育の行政の歴史は、
     学習者の拡大と多様化に対応するために行った施策の足跡である。

32   戦後の主な施策
321 国語課の再設置:戦後国語課は一度廃止され、昭和二十二年に再設置される。その際、
     所掌事務として「外国人の日本語教育に関すること」が加わった。

322 日本語教育センターの設置:昭和五十一年に日本語教育の中核的センターとして「日本語
     教育センター」が設置された。近年の日本語教育の急速な拡大と多様化によって、日本語
     教育センターの重要性が高まっている

323 日本語教育推進対策調査会:昭和四十八年から五十一年まで文化庁に設置され、その間に
     「外国人に対する日本語教育の推進の具体策について」及び「日本語教員に必要な資質・
     能力とその向上策について」の二つの報告書を文化庁長官に提出した。
 
324 日本語教育推進施策調査会:昭和五十二年から五十四年まで文化庁に設置され、「日本語
     教育の内容・方法の整備充実に関する調査研究について」の報告書を文化庁長官に提出した。

8.韮澤弘志(1995)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより11− 国語政策の新しい展開」日本語学144 明治書院 pp.103109

目的:近年、社会の急激な変化に対応して新しい展開を示している国語政策の主な動きについて簡単に説明する。

1.国語審議会

 「今後の国語審議会は、国語の問題全般を取り上げるべきこと、具体的には言葉遣い、情報化への対応、国際社会への対応、国語の教育・研究、表記の5つの事柄について検討すべきである」という文部大臣からの諮問を受けて、「言葉遣い」「情報化への対応」「国際社会への対応」の3つの課題を中心に検討を進めている。

2.国語施策懇談会

 平成五年度から「一日国語審議会」の性格をもつ国語施策懇談会を毎年全国四か所で開催し、地域の学界、教育界、経済界、マスコミ等を代表する有職者が参加し、活発な討議が行われた。その結果は審議の貴重な資料となっている。

3.国語施策の普及

 文化庁では毎年「ことばシリーズ」という冊子を作成し、全国の教育機関等に配布している。本年度から内容・体裁を充実し、「新・ことばシリーズ」として刊行することとしている。更に、「美しく豊かな言葉をめざして」というビデオテープを作成し、全国の視聴覚ライブラリー等に配布している。 

4.外国人に対する日本語教育

 文化庁では(一)地域日本語教育事業、(二)『異文化理解のための日本語教育QA』等の刊行、(三)日本語教育大会(仮称)の開催のような事業を行っている。

5.国語政策の当面の課題

1)言葉遣いについて:平成四年の世論調査の結果から、多くの国民が話し言葉や敬語を
   中心に言葉遣いが乱れていると感じており、国語教育の充実などその改善を求めていることがわかった。
   国語審議会では各種の世論調査の結果を踏まえ、議論していく必要がある。

2)情報化への対応:ワープロ、パソコン等の情報機器の飛躍的な発達と普及は、言語生活にかつてなかった
   ような新生面を開きつつある。それに伴い、国語政策においても新しい課題を顕在化させている。

3)国際社会への対応:日本語の国際的な広がりの支援、国際的に活躍しうる言語運用能力をもった
   日本人の育成、外来語の増加や外国語の過度の使用などが重要な課題である。

9.氏原基余司(1995)「日本の言語政策を考える−文化庁国語課だより12−国語審議会への期待-平成六年度国語施策懇談会-」日本語学14-5 明治書院 pp.98108

1.目的

平成六年度の国語施策懇談会で出された意見を中心に紹介する。

2.施策懇で出された意見の概要
21 国語審議会の基本姿勢に関すること:
   ・国語施策における反省点を今後の施策立案に生かしてほしい。
    国語審議会で話し言葉を取り上げるのは難しい。
   ・客観的な事実に基づいて、現実を把握することが大切である。
   ・積極的に、答申や報告を一般に紹介していくべきだ。

22 言葉遣いに関すること
   1)言葉遣いの基準:・話し言葉の乱れを少しでも押しとどめるために、基準を示すべきだ。・言葉遣
     いの問題は個人の価値観に左右されるので、基準の作成に疑問を感じる。

   2)放送等マスコミの言葉:放送等のメディアにおける言葉には問題があり、また子供に悪い影響を与え
     やすいから、自覚を求める。

  (3)敬語:敬語は日本人にとっても難しい問題であり、国の標準を示してほしい。
   4)国語教育・国語能力:学校教育において、論理的な表現の訓練・発音練習等が望まれる。また、教師
     もしっかりした国語能力をつけてほしい。

  (5)その他:言葉の乱れに中にも、肯定的な面があるので、よく見極めるべきだ。

23 情報化への対応に関すること

1)情報機器と国語能力:ワープロを用いた場合、校正ミスが多くなるなど、言語生活に大きな影響を及ぼす
と思うがこういった研究はあまり行われていない。情報機器により、漢字の書き能力が低下している。

2)ワープロ等における漢字の字体:JIS規格により印刷分野で制約を受ける等、混乱が起きている。

24 国際社会への対応に関すること

 (1)国際化と言語教育・言語能力:日本語の文はあいまいなものが多く、相手に判断を委ねる文化である
  が、国際化社会においては、きちんと表現する力をつける必要がある。

2)日本語および日本語教育:言語運用能力の側面において、外国人日本語学習者の教室の外での言語習
  得に視野を広げて検討してほしい。

3)外来語・外国語:・言語使用における規制は国語の活力を抑え、表現を不自由にする。・現代の日本
  語に外来語が多いのは問題があり、明治時代の見事な日本語訳に見習うべきだ。

 

 

10 氏原基余司(1995)「日本の言語政策を考える−文化庁国語課だより13−「ことば」シリーズから新「ことば」シリーズへ」日本語学14-6 明治書院 pp.8289

1.目的:本稿では@新シリーズへの移行の経緯、A新シリーズ12の作成の趣旨等の2点を中心に紹介する。

2.新シリーズへの移行

21 移行の理由:20周年を迎えた「ことば」シリーズの内容が日常的なものから離れ、専門的になっていくと
   いう指摘があった。より分かりやすく、より親しみやすいものにする趣旨からずれていることは問題であ
   り、見直す必要性を感じたのが背景となった。

22 新シリーズの特色@解説編、問答編共に活字を大きくし、字詰めや行数についても読みやすく工夫した
   こと。A問答編の文体を「です・ます」体に変え、更にテーマ別編集にしたこと。
B問答編の各問答を
   見開き二ページで収めたこと

3.新シリーズ12作成の趣旨等

31 解説編:従来と同じように一つのテーマの下に、座談会と解説論文四編という2つの部分から構成されて
   いる。

1)テーマの趣旨:新「ことば」シリーズ1として「国際化と日本語」をテーマにした。国際化に伴って変化
   している日本語の現状とその問題点を明らかにし、同時にその対応策についても考える。

2)座談会および解説論文:今回の座談会は「国際化時代の日本語をめぐって」について行われた。解説論文
   は@日本語の国際化、A国際化社会における言語と文化とアイデンティティー、B「外国人とのコミュニ
   ケーション」―外国人問題はこれからどうなるか―、C日本の国際化の中での子供の言語習得問題の四つ
   である。

32 問答編:新シリーズの2では「敬語」をテーマとして取り上げ、一問一答の形式で解説を加えた。
1)編集委員・執筆委員:編集委員と執筆委員に分かれており、テーマに応じてふさわしい方を執筆委員
   としてお願いし、そうした執筆委員の選出まで含めて、編集段階から加わっているのが編集委員という
   ことになる。今回の問答編でも従来と同様に共同執筆の形をとって編集委員会で、一つ一つの問いに対
   して、何度も討議した。

2)問答編における解説の姿勢等:「このシリーズは、規範を示そうとするものではなく、人々が言葉につ
   いて考える際に参考となることをねらいとするものである」という姿勢は従来と同じである。


11 浅松絢子(1995)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより14−英米独仏各国における言語政策の概要」日本語学14-2 明治書院 pp.104109

・目的:英米独仏各国において、国がどのように、どの程度その国の言語にかかわっているかについて調べ、
    日本における当該事情などを対照する。

1.国内の言語政策の仕組み
1)所轄官庁等:日本では文化庁文化部国語課が国内の言語に関する施策を所管するが、英・米・独には
   該当する行政機関はない。フランスには文化フランス語圏省がある。

2)日本の国語審議会に相当する機関:英、米とも相当する機関はない。ドイツには連邦各州文化大臣
   常設会議(KMK)がある。フランスには@フランス語高等評議会、Aフランス語総合調整本部、
   Bアカデミーフランセーズの3つの機関がある。

2.言語の標準の現状
1)表記に関する標準:・日本語の表記については、「送り仮名の付け方」「常用漢字表」「現代仮名遣い」
  「外来語の表記」などがある。・イギリスはアメリカと同様、国で示す標準はなく、単語のつづりについ
  てはOEDがよりどころとされる。・ドイツでは、KMKの諮問を受けたドイツ語研究所では、表記について
  答申を行ったが、今まで以上に複雑になると言われている。・フランスは「つづり字の改正」が発表され、
  学校教育に採用されている。

2)発音に関する標準:日本を含め、英・米・独・仏において国で示す標準はない。
3)言葉遣いに関する標準:・日本には@「これからの敬語」A「標準語のために」B「話し言葉の改善に
   ついて」C「語形の「ゆれ」について」D「公用文作成の要領」E「法令用語改善の実地要領」がある。
  ・英、米、独では標準を示していない。・ドイツ語には言葉遣いについて、若い人たちの言葉の問題、
   性差別廃止の観点からの問題などがあると言われている。・フランスでは、外国語の借用語彙の氾濫を
   防ぐ強い意志が見られる。また、若い人たちの新語の問題も指摘されている。

4)放送の言葉:・日本では「放送用語の調査に関する一般方針」、「NHK国内番組基準」、等を示している。
  ・イギリスではBBCにおいて言葉の正確な使用に関するマニュアルが編まれており、発音については、
   標準発音の採用が基本とされている。・ドイツでは規制はしていないが、番組の性格によって標準語
   その他の言葉遣いを使い分けている。

5)新聞の言葉:日本とアメリカでは大手新聞社において、スタイルブックを編成、市販している。
   英・独・仏に関しては情報を得ることができなかった。

3.外来語政策

・日本では「外来語の表記」があるが、語形の決定はせず、使用制限等の標準はない。
・英、独については情報がない。・アメリカは外来語への対策はなく、むしろ寛大である。
・フランスは「フランス語の使用に関する法律」が1994年に成立した。これは1975年の「バ・ロリオル法」
 を強化したものであ る。フランス国民の反応は外国語使用を認めるとする人の割合が7割という結果が
 見られた。

12 深澤博昭(1995)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより15−国内の日本語教育の動向分析」日本語学14-明治書院 pp.114120

1.目的:平成六年十一月一日現在で行った調査結果に基づき、日本語教育の現状分析及び今後の動向について
     触れることとする。

2.日本語教育実施機関について

 日本語教育を実施している機関は、1.512機関となり、対前年度32.3%の増となっている。内訳を見ると、
民間の日本語学校や地域の国際交流協会等の一般の日本語教育機関が936機関と最も多く、以下大学・
大学院が442機関、短期大学が80機関、高等専門学校が54機関の順となっている。また、前年度の調査と
比較すると、被用者、主婦などの一般の成人を対象とする機関が192機関から413機関へと約2.3倍の増に
なっており、従来の留学生、就学生といった学習者に対する日本語教育だけでなく、地域で生活する外国人
への支援の日本語教育へと新たに展開している。

3.日本語教員について

 日本語教員数は、全国で16.036人で、対前年度4.894人、43.9%の増となっている。ボランティアの日本語
教員が6.354人で、非ボランティアの日本語教員が7.205人となっており、地域の国際交流団体やボランティア
団体等の主催の日本語教室の増加により、ボランティアの日本語教員もかなりの数になっていることを示して
いる。
 今後は、地域社会での日本語教育が推進するものと考えられるが、そこでは日本語教育の専門家と
ボランティアの連携をどう図っていくかが重要な課題となる。

4.日本語学習者について

 国内の日本語学習者数は、対前年度8.2%の増の83.220人で過去最高となっている。 日本語学習者の
うち、その目的が留学生・就学生等の大学教育を前提とする者が37.801人で全体の45.4%を占めている。
以下、外国人子女が11.847人、技術研修生が5.145人、聴講生・研究生が3.122人の順となっている。前年度の
調査と比較すると、被用者や主婦等の一般成人の日本語学習者と技術研修生の数がそれぞれ51%26%増加
している。この人たちの殆どは、地域の国際交流協会やボランティア団体等の主催の日本語教室で学習して
いると考えられ、地域社会で生活するためには日本語学習が不可欠であることを裏付けており、学習目的の
多様化が進んでいると考えられる。

 学習者の多い出身国は、中国(22.019人)、韓国(12.739人)、アメリカ(11.151人)の順となっているが、
前年度と比べて大きな特徴としては、ペルー出身が3.0倍(357人→1.062人)、ブラジル出身が2.3倍増加して
いる点が注目される。

13 浅松絢子(1995)「日本の言語政策を考える −文化庁国語課だより16−「国語に関する世論調査」概要」日本語学14-9明治書院 pp.106112

・調査の目的:日本人の国語意識のあり方について調査する。
・調査対象:全国16歳以上の男女2212名(有効回答者) 
・調査方法:個別面接調査。・調査期間:199546日〜17
・調査の結果
1)言葉遣いについての意識:国民は「今の言葉は乱れている」という問題意識を持っており、また、
  「新聞や放送などは、そこでの言葉遣いが子供などに与える影響を自覚することが必要だ」と認識
  している。学校と国に対しても、国語の教育と意識の高揚を訴える割合が高かった。そして、共通語
  と方言については、「相手や場面によって共通語と方言を使い分ければよい」との意見に回答率が多く、
  方言を大事に考えていることがわかった。

2)敬語についての意識:多くの国民が敬語を使うことを肯定的に捉えており、多様な敬語表現を求める
  傾向にあることが見られた。また、「目上の人には敬語を使うほうがよい」、「親しい人に敬語を使う
  のはよそよそしい」という質問項目に高い同意率が見られた。

3)話し方についての意識:あらたまった場でそれほど親しくない相手に自分のことを言うとき、女性の
  9
割が「わたし・わたくし」であるが、男性は比較的ばらつきが見られた。また、上記と同じ状況で相手
  のことを言うとき、「名字+さん、さま」が最も多く(37.7%)、それ以外は様々であった。
  「やる/あげる」の使用に関しては、「やる」の方が上回った。また、使用における地域差と性差が見
  られた。「ら抜き言葉」の使用においては、全体的に割合が高くなかったが、「来れる」については、
  1619歳の過半数が使うとしていることが注目されるところである。気になる敬語は「お客様、どうぞ
  いただいてください」の謙譲語を尊敬表現に用いる誤用例である。一方二重敬語に抵抗を感じる人は少
  なかった。

4)外来語・外国語についての意識:外国人の話す日本語は「意思が通じさえすればよい」とし、寛大に
  認めている傾向が見られた。また、日本人に対する国語教育及び外国語教育を重要視するが、外国人の
  日本語教育に対しては、相対的に低い同意率が見られた。「日本語が国際機関や国際会議などの場で、
  もっと使われるように主張すべきである」という意見の同意率が不同意率を上回った。そして、外来語・
  外国語の増加に対する容認が6割を占めた。ローマ字による姓名の書き方に関して、「名を先」の方が
  大きく上回った。

5情報機器の発達がわが国語に及ぼす影響:「疲労しやすい」、「文章の中で漢字を多く使うように
  なった」、「漢字の書き方を忘れることが多くなった」などの意見が多かった。また、ワープロでの
  難しい漢字の表示に関して、常用漢字表にない漢字の字体をどちらか一方に決めることが困難である
  ことが窺われた。

14 氏原基余司(1995)「日本の言語政策を考える−文化庁国語課だより17−国語問題研究協議会-国語審議会への要望」日本語学14-11 明治書院 pp.101109

1.目的:今回は毎年2回開催される国語問題研究協議会を取り上げ、協議会の参加者の意見を中心に紹介する
     こととする。

2.国語問題研究協議会の沿革と開催の趣旨

発足の当初は「国語教育研究協議会」という名称として、国語教育を通じて新国語施策(「当用漢字表」、
「現代仮名遣い」など)の普及・定着を図るということが目的であった。協議会の活動の中でさらに、
文部大臣から、昭和21年からの一連の国語施策について、実施の経験等にかんがみ、種々の再検討を加えて
改善を図るべく諮問が出され、当初の国語施策についての問題点及び改善方策を国語教育の立場からも探っ
ていくという背景で、昭和43年「国語問題研究協議会」と改名している。

3.協議会で出された意見の概要
1)言葉遣いに関すること:・言葉遣いにおける目安・基準を出してほしい、・マスコミ側も言葉遣いに
   自覚をしてほしい、・学校内での敬語の使い方のための下地を作ってほしい、・方言を尊重してほしい、
  ・教員用の教材を作成してほしい

2)情報化への対応に関すること:・字体の統一の指針を考えてほしい、・情報の選択力を持つようにする
   ことが大切だ、・ワープロによる漢字力・書写力の低下が心配だ

3)国際社会への対応に関すること:・方言の問題を含めて、日本語を外国人にどのように教えればいいかを
   審議会で決めてほしい、・帰国子女のための指導のマニュアルを示して  ほしい、・「ローマ字のつづ
   り方」の見直しを行ってほしい、・ローマ字教育をもっと多くしたい

4)その他:・句読法についてのよりどころを出してほしい、・原稿用紙の使い方、漢字の筆順や部首の名称
   等を統一してほしい


4.おわりに:特に印象的だった意見は「個人的には「ら抜き言葉」に対して抵抗がないので、生徒にどこまで
指導すべきか悩んでいる」であった。この意見には、言葉遣いの指導にかかわって論ずべき様々な問題が集約
されているように思われる。

15 田島弘司(1995)「−文化庁国語課だより18(最終回)−平成七年度「文化庁日本語教育大会」」日本語学1412 明治書院 pp.92101

目的:平成七年度「文化庁日本語教育大会」初日の「これからの日本語教育を考える」シンポジウムにおける
   討議内容について報告する。

1.全体の概要

・趣旨:日本において外国人をいかに受け入れていけばよいかを言葉の問題を中心に議論することによって、
 これからの日本語教育の在り方について考えることにした。

・論点:@日本に定住する外国人は、日本の文化や日本語を学び、日本社会に適応していくことが望ましい。
 A日本人は、日本に定住する外国人が自国の文化や言葉を保持したまま共生していけるような「多文化
 多言語社会」を形成していくことが望ましい。

2.パネルディスカッションの内容

2.1 各パネリストの提言:論点Aの立場として、高島肇久(NHK解説委員長)は多文化多言語先進諸国に
   おける対応を参考にして、第二言語教育や多言語放送等の社会制度の充実を求めている。中間的な
   立場としては、アグネス・チャンが、日本に来たら日本語や日本の文化を学んだ方がよいとして論点
   @を支持し、同時に多様な言語や文化との共存も求めたいとの論点Aも支持している。論点@の立場
   として、鈴木孝夫が、欧米的な多文化多言語社会を目指すのでなく、独自のやり方で新しい時代に対応
   していくことを求めている。

2.2 ディスカッション:論点@の、外国人が少数である限りは、多文化多言語対応は考慮する必要はないと
   する立場と、だからこそ多文化多言語対応が必要であるとする論点Aの立場が対立している。
   中間の立場として、例えばアグネス・チャンは、外国人の気持ちを優先し、「人権」を絶対的モラル
   としてとらえている。

・ジョン・C・マーハ:日本においてはアイヌ語を見てもわかるように、日本では多文化(多言語)主義は
 進んでいない。

・高島肇久は学校教育の中で、違った文化、違った言語を重視して、それを制度として位置づけてはどうか。
・加藤秀俊:学校の先生にも変わってほしい。

3.まとめ

 論点@は、在日外国人側が日本社会に合わせる努力をすることを前提とし、論点Aは、日本人側が在日
外国人の言語や文化を既存の社会に取り込む努力をし、結果的に多文化多言語社会の形成を促すことを前提
とする。問題は、外国人側だけに努力を強いる傾向のある既存の日本社会をこれでよしとするのか、日本人
側が外国人のニーズを考慮し、社会を変えていこうとするのか、ということであることが見えてくる。

16 田島弘司(1997)「日本語教育行政の連携の可能性を探る」日本語学 16-5明治書院 pp.5863

1.目的:5年間の行政機関での勤務を通じて得られた知見を基に、多様化の時代を迎えた日本語教育に
     おける行政の連携の可能性について考える。

2.連携の必要性と実現性

「外国人に対する日本語教育の推進の具体策について−日本語教育推進対策調査会報告」における提言の
中から、「連携」と関わる項目を取り上げ、考察を行う。

1)連携の必要性:連携が必要な事項として次の4つが挙げられる。
  @関連研究分野との連携・協力(学際的な研究の必要性)、A日本語教育機関などとの連携・協力、
  B日本語教育関係者、特に外国人の日本語教員・研究者への支援、C日本語学習者に対する支援

2)連携の実現性:上記で挙げられた連携の必要性の4つの項目について考察する。
  @明確に他分野との連携を目的とした事業は見当たらないが、日本語教育が関わりを持つ分野は確実に
  増えている。A情報の共有化はあまり進んでいないが、各機関がインターネットのホームページを製作
  中である。B国際交流基金が「海外日本語教師等の訪日研修、日本語教育専門家の長短期派遣、海外日
  本語センターの設置・運営等」のような支援活動を行っている。C主に教員養成、教材開発、日本語能
  力試験の実施等を通じて間接的に行われているのが実状である。

3.新しい連携のあり方
31 報告書に見る連携:第二○期国語審議会の審議経過報告の連携に関する事項について紹介する。
@日本語教育関連機関相互の連携促進と長期的・総合的施策の推進:連絡・調整を図る体制を確立すべき
 である。
A日本語教育を推進するための支援ネットワークの構築:日本語教育に関する情報のデータベース化と
 情報の共有のための支援ネットワークを構築する必要がある。
B高度情報化に対応した日本語教育の推進:マルチメディア教材等を開発し、インターネットなどを通じて
 活用できる体制づくりが必要である。

32 新しいパラダイムの必要性:よい情報は秘匿し死蔵するのではなく、公開し、多くの人々が共有
   することで、輝きを増すという発想、新しいパラダイムが定着してこそ,本物の連携が形成される。

17 朝鮮新報(2003.3.8)「文部科学省、大学受験『インターに限定』−今月27日まで意見募集」http://210.145.168.243/sinboj/j-2003/j02/0302j0308-00004.htm

 文部科学省はインターナショナルスクールに限定して大学、高校受験資格を認める方針を、6日開かれた
中央教育審議会の大学分科会で正式に発表、了承された。
同省はこの方針と関連し、27日まで意見を募る
という。意見提出方法は郵便、ファクス、Eメール(テキストファイル)。

 あて先=同省高等教育局大学課大学改革推進室法規係、住所は〒1008959東京都千代田区霞ヶ関
322
、ファクスは0335926864Eメールはdaikaika@mext.go.jpまで。

18 朝鮮新報(2003.3.13)「民族差別に加担しない−大学受験資格、アジア系排除批判し京大副学長ら国立大教職員946人が声明」 http://210.145.168.243/sinboj/j-2003/j02/0302j0313-00001.htm

 公私立大の過半数が外国人学校出身者に門戸を開放しているなか、国立大は文科省の立場を踏襲し資格
を与えていない。文部省の「認めない」方針をいわば補完している国立大の教員らが自ら当事者意識をもっ
てその方針を非難し、公正な判断を世論に訴えた意味は重い。

 声明は、「国立大学教職員として責任ある立場に置かれている」としながら、文部科学大臣に@民族学校
出身者に対して国立大への受験資格を認める法的措置をとることA受験資格認定は、各大学の自主的な判断
に任せることを公に声明する−ことを求めた。

 声明への賛同を呼びかけたのは、京都大学の駒込武助教授、水野直樹教授をはじめ東京、九州、一橋、
北海道、大阪、金沢、東京外国語、神戸、お茶の水女子大の教職員ら。2日に呼びかけ、1週間で1000人近い
署名が集まる広がりを見せた。教職員が賛同した大学は70校。全国に99ある国立大の70%にあたる。

 今後教職員らは、各大学が自主的に判断し受験資格を認めるよう教授会などに働きかけるという。
現制度下においても学校教育法施行規則第69条第16号「その他大学において、相当の年齢に達し、
高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」の「大学認定条項」を使って受験資格を認める
ことができるからだ。

19 朝鮮新報(2003.5.12)「民族教育への差別−現状と課題」http://210. 145.168.243/sinboj/j-2003/j02/0302j03512-00001.htm

 大学受験資格問題を契機に、在日同胞と日本市民の間では今あらためて、民族教育への様々な差別是正と
処遇改善を求める声がわき起こっている。

 日本政府による差別の現状などを整理すると共に、今後の課題について見た。受験資格−大学は
「検討中」、ハンディも
受験資格には、大学、各種国家資格の受験問題などが含まれる。
 大学受験資格問題は、かねてからの要請にもかかわらず、文部省が36日、外国人学校の中で英米の
評価機関の認証を受けたインターナショナルスクールの卒業生のみに与えるという方針を下したことを
端に、「新たな差別の助長」という声が各地で上がった。

 こうした世論に押され、文部省は同月28日、方針を凍結、再検討を余儀なくされた。
 島根大学の内藤正中名誉教授は、「文部省の方針は自らが進めてきた『教育の国際化』に反する
もので、国立大学の教員自身も民族学校の実情を見ようとしなければ、民族差別の加担者になりかねな
いと」強調した。

 次に、各種国家資格の問題だが、朝鮮大学校卒業生の場合、司法書士、公認会計士、不動産鑑定士な
どの資格取得試験を受けるには、日本の大学卒業生なら免除される一次試験から合格しなければならない。
免除対象になるには、日本の大学に通いながら一定の単位を取るか、日本の大学院に入学するかといった。
ハンディを背負わされている。

 助成金−公立の10分の1、私立の3分の1、納税でも権利なし
 朝鮮学校の学父母らは、日本人同様、納税の義務を果たしているが、朝鮮学校には日本政府からの補助は
一切なく、地方自治体が支給している補助金も、日本学校は公立(小中高)で年間8090万円、私立(同)
では年間2530万円前後が生徒1人当たりに支給されるが、朝鮮学校は平均8万円前後で、公立の10分の1
私立の3分の1に過ぎない。

 納税上の待遇−損金認めず、インターは認定
 制度上の待遇措置における差別とは、「各種学校」を理由に、日本政府が朝鮮学校への同胞の寄付を損金
(控除)として認めていないことをいう。

 さらに日本政府はこの4月から、英米の評価機関の認証を受けたインターナショナルスクールを
「特定公益増進法人」に追加。私立同等の税制上の優遇を付与した。

20 朝鮮新報(2003.6.19)「学校として認められない外国人学校−大学受験資格、助成面で差別」http://210.145.168.243/sinboj/j-2003/j05/0302j0619-00004.htm

6万円近い負担、入学断念も(ブラジル人学校コラージオ・ピタゴラス)

ブラジル人学校増加の背景には、1990年の入管法改定によって日系人に対する在留資格付与条件が緩和
されたことがある。日本に住むブラジル人は年々増え続け、01年末現在265962人と「朝鮮、韓国」
「中国」に続く。

定住化とともに家族を呼び寄せるブラジル人が増えた。その、彼らが直面したのが子どもの教育問題
だった。当初は日本の学校へ通わせるしかなかったが、「本国に帰った時にポルトガル語を使えるよ
うに」と、ブラジル人学校の設立が続いている。学校だけでも日本各地に25校。外国人学校中、
朝鮮学校の次に多い。

コラージオ・ピタゴラス校の最大の悩みは、「学校として認められていないこと」、つまり「無認可校」
であることだ。学校の運営は学校名と同じ有限会社が行なっているが、最も悩まされているのは高い
授業料だ。幼稚園から高校まで月額4825円。そこに毎日の弁当代と送迎費、教材費が含まれると、
月当たり6万円近い負担。負担の重さに入学を断念せざるをえない保護者もいることから、学費の割引
制度も設けている。

事業収入だけでは立ちゆかず(東京中華学校)
「中国語教育を強化し、中華文化の継承を重視する。中、日、英3ヶ国語を兼ね備えた華僑の子どもの
育成に努める」(陣哲燦校長)という教育方針のもと、国際化時代に対応できる小学1年から英語
も教える。

同校も各種学校扱いのため、朝鮮学校同様、不利益をこうむっている。2003年度高校部卒業生25
のうち、日本の大学、専門学校への進学者は21人だったが、大学受験資格がないため大検などの負担
を軽減しようと高校部から日本の高校へ進む生徒も少なくない。そのほかにも、財団法人が運営する
テナント収入や華僑社会からの寄付金だけではたちゆかず、財政問題とそれにともなう教職員の不足、
教育設備の老朽化などの問題を抱える。

定期券、携帯の学割効かず(インドネシア共和国学校)
1962年の創立。インドネシア大使館が運営する日本で唯一のインドネシア学校だ。私立学校として
本国の認可を受けており、インドネシア大使館や在日インドネシア企業、留学生の子どもたち70
が学んでいる。幼稚園から高校まであり、カリキュラムは633制だ。

学費は親の収入によって負担額が4段階に分かれている。
本国による援助はあるものの、日本政府の財政その他の支援はない。学校教育法上、無認可校の扱い
のため、大学受験資格はもちろん、定期券や携帯電話の学割が適用されないなどの制度的差別がある。


21 朝鮮新報(2003.6.19)「民族学級『ポンソナの会』(羅基哲)」http://210.145.168.243/sinboj/sinboj2000/sinboj-2000-7/sinboja000714/sinboj0007

1回、金曜日放課後に/本名で進級、親に教える子も

住之江小の民族学級は、92年に開校した。名称は「ポンソナ(鳳仙花)の会」。毎週金曜日の放課後に
開かれ、現在、対象者の約8割に当たる15人が学んでいる。
授業中、子どもたちはみな、本名あるい
は民族名を名乗る。授業は、ハングルの歴史や日本と朝鮮のつながり、文化などを解説した市教育委
発行のムジゲ(虹)とチュモニ(袋)を参考に進められている。

中田圭治校長は、「日本の子にとっては朝鮮を知り在日コリアンについての認識を深める機会となる、
民族学級で学ぶ子にとっては民族について日本人生徒に教える場となっている。相互理解が深まって
いる」と述べていた。

【受講生とOBの声】
・在日のルーツ知る/帰化はいや/高校からは本名/ほこりもって生きたい

・「ハラボジやハルモニはハングルは書けないけど、しゃべることはできる。でもアボジとオモニは
 しゃべることもできないし、書くこともできない。このままだと、私たちの子孫は書いたり
 しゃべったりできなくなるだけでなく、自分のルーツさえも知らなくなってしまう。
 だから民族の証である言葉を学びたかった」

「将来、通名の考えで、帰化するかもしれない。めっちゃいやや。今まで、がんばってきたことが
 かき消されるような感じだ。高校に行ったら、在日コリアンの子たちが集まる場もある。
 1
人でも話ができる仲間を見つけたい」

大阪市2割の公立校に民族学級

本名の呼び方から生活問題まで年齢層別に授業

大阪府下の民族学級は、1972年に発表された「7.4南北共同声明」の精神に基づき始まった
72年型」と、48年の「4.24教育闘争」後に設置された「48年型」と呼ばれる2つの形態が
ある。9割が前者だ。名称は各学校によって異なる。大阪市では市教育委の指導のもと、
2割の公立学校で運営されている。

授業は小学校低・高学年、中学生に分かれて週1回、放課後、課外授業の形態で行なわれている。
以前は誰が学んでいるのか、外部に知られないよう教室のカーテンを閉め切って行なったりしてい
たが、現在はコリアンをアピールできる場として受け入れられている。

低学年は本名の呼び方や書き方、朝鮮の歌の修得を通じて自然にコリアンであることを自覚できる
ように、高学年では朝鮮の歴史や社会学習を通じて自己存在にかかわる要素を、中学校では外国人
登録法の問題など生活において目に見える課題について学んでいる。受講生は、「朝鮮・韓国籍」
の子どもよりも、国際結婚、「朝鮮・韓国籍」離脱による日本国籍取得(帰化)者、「ニュー
カマー」の子どもたちが大きなウエイトを占めつつある。

22 水谷修(1995)「日本語教育政策−日本語教育全般について―」日本語教育86日本語教育学会 pp.921

政府の政策の方向

日本語教育に関する政策の大きな流れを把握するのには、平成6年総理府の「国際文化交流に
関する懇談会」からの報告書「新しい時代の国際文化交流」がよい手がかりとなる。
第V章の4節「日本理解の飛躍的推進」の中で日本語教育の政策が具体的に扱われている。

日本語教育への需要をたしかめる
21 学習者の数の変化をどう見るか:国内における留学生、就学生の数が減少していると
   報告されており、海外の場合は全体としては増えているが、中国、ペルー、イタリアでは
   学習者が減少している。国内の場合は円高が原因とされるが、海外の場合ははっきりとした
   原因はわかっていない。情勢のより確かな分析及び根本的な対策が求められる。

22 学習者の多様化への対応:日本語学習者が多様化する中で、特に日本の社会に溶け込んで生活
   するための日本語を学習する人たちに対する体制が十分に整っていないのが現状である。


日本語教育界自体の課題
31 専門性に関して:多様化する日本語教育の現実の中で、次々と設置されていく日本語教員養成
   の課程の教育内容がどこの大学でも変わらないということには問題がある。

32 普遍性に関して:国際化の激しく進む中で、日本語教育の国民全体の課題としての位置づけを
   確認する必要がある。

33 日本全体の国際化の貢献:日本語教育が国際化対応への尖兵としての責務を果たす努力と戦略
   を持つことが日本社会の中での位置づけとして与えられている。


日本語教育を支援する体制づくり
現在、日本語教育はほとんどの省にわたって関係している。第20期国語審議会の報告が述べている
ように相互の連携を一層増進し、長期的・総合的な視野に立った施策を強力に推進するべきであり、
そのための連絡・調整を図る体制を確立することが不可欠であることは疑う余地がない。


日本語教育の内部の努力がいかに尽くされようとも、社会全体の支援体制が用意されなければ
日本社会のすみずみに、また、海外の各地に広がり、学術、経済、教育、産業、等々の各領域で
求められている日本語教育の需要に効率的に応じることのできる態勢づくりは達成しえないだろう。

23 西尾珪子(1997)「日本語教育政策推進のための連携を考える」日本語学16-5明治書院 pp.3137

1.目的:日本語教育の分野が辿ってきた経緯を振り返えりながら、連携の具体的な施策を述べる。
     そして、連携の実現のために関係者がすべきことを探求してみたい。

2.日本語教育の氷河期となぜ言われるのか

国家経済の動向や国家の信用の失墜、そして多様化する学習者に対する日本語教育分野の連携の
不十分さなどによって、あおりを強く受けた機関が厳しい経営状態に陥り、氷河期という名で
呼ばれる所以となったのである。

3.日本語教育政策の転換期

 今は長期的展望に立ち、国際化や高度情報化を十分に見据えた上で必要な改革や修正を行う時で
ある。各分野とのネットワークを基盤として共同作業、協力態勢を築き、連携の実現に向けて
進み出すことを考えたい。

4.他の分野との連携の促進
4-1.日本語教育機関同士のみならず他機関との連携:近年になって日本語の学習者層が厚くなり、
   大学内でも数々の学部と留学生センター、大学と日本語学校、日本語学校と社会人教育機関
   などの連携の問題が持ち上がってきた。特にほかの分野の機関や専門家との連携が積極的に
   求められなければならない。

4-2.先発と後発の連携:新たな対応に当たって先発で地道に努力していた機関の実績が新しく取り
   組む機関に果たしてどのくらい役に立つことができたであろうか。教育関係
者は実践に当たっ
   ては先発の実績を生かすことに努力を惜しまないでほしいものである。

4-3.社会生活を踏まえた多角的連携:インドシナ難民、中国帰国者に対する第二言語としての日本語
   教育は、日本社会への定住のための社会適応の上での言語学習という面で
従来の日本語教育と
   異なる。生活の多角的な面において、関係者との連携が必要である。

5.縦割から横の連携へ

 複数の省庁が協力してプロジェクトを構成したものが、日本語教育分野で多くなっているが、予算の
枠組みが縦割りでありながら、実行は横割りでという難問の中で、今後どこまで柵が低くできるのか。
各省庁の連携・行政と民間の連携が期待されるところである。
 

6.連携のために総合的日本語教育政策を急ぐ

 当座凌ぎではなくて、総合的日本語教育政策を立てることによって、日本の経済優先の体質からくる
文化軽視の風潮も改めることができよう。

 

24 芳賀登(1991)「朝鮮人の日本移民と言語教育政策−朝鮮語と国語との関係を中心として−」朝鮮語教育研究第5号 近畿大学教育研究所 pp.1771

はじめに:(略)

朝鮮人蔑視観の形成−在日朝鮮人移民と在朝鮮日本人移民−

在日朝鮮人の人口の変化を見ると、[T]土地調査事業[U]産米増殖計画[V]
皇民化政策[W]強制連行と大いにかかわる。

とくに大正8年の31独立運動までは、あまり朝鮮人は日本に来ていない。彼らは祖国にいて、
土地を守り、黄茶色の朝鮮牛を担保として頑張っていた。

ところが産米増殖計画によって朝鮮米の品種改良と生産性向上への努力、とくに土地改良事業が
行なわれる中で、なぜか、多くの人々が故郷を喪失し、朝鮮の南半の人々は、日本へ渡るものが
多くなっている。

その中で、最も多くの朝鮮人が渡来したのは大阪周辺である。これは大阪が古来日本の中での
朝鮮文化の影響を受けていたことが多く、その上に大都市でくらし易かったことが原因となっている。

朝鮮総督府は、朝鮮の社会動向への関心をよせ、「由来朝鮮民族は感鋭敏、忍耐力薄弱」という
ようにかきあげている。少なくとも支配者側からみると、朝鮮人が無気力にみえたことは事実であり、
その他は一部不逞之輩と考えたのであろう。

総督府の調査や憲兵隊さらには内務部・朝鮮軍の調査資料は、行政、軍、警察の線を辿っての調査で、
包括的であるが、数的処理はされていても、表面的で本音をしらべあげるものでもなかった。
そのため偏見や予見の是正にはあまり役に立つものではなかった。

2.大阪在住朝鮮人の実態と朝鮮人の日本移民

 大正121923)年の4月末日の大阪府の調査によると在住朝鮮人男子15222人、女子はわずか
2
969人である。男女比率の差が激しい。そのあと急速にふえ、12年末には2万以上に上がった。

昭和になると日本への渡航者の増加はつづき、在内地朝鮮人の人口については『朝鮮経済図表』
(朝鮮統計協会 昭和15年)によると、大正4年約4千人、大正9年約3万人、大正14年末、約13万人、
昭和6年約31万人、同9年末約53万人、昭和12年末約73万人となっている。在住朝鮮人の90%は筋肉
労働者であり、その75%が、自由労働者であった。

193034年の日本での不景気によって在日朝鮮人労働者の失業問題はより大きい社会問題となり、
朝鮮人の渡航を阻止する方針がとられた。朝鮮における大量の朝鮮人失業者、半失業者は生きるた
めに日本、「満州」へと海外に流亡したが、日本の支配者は日本への流入抑制政策をとった。
1931
9月日本は「満州」侵略を開始し、朝鮮人の目を「満州」に向けさせ、朝鮮人失業者の満州
移住政策をうちだした。

しかし、ファッショ的戦時体制への転換による軍需産業の拡充、労働者の需要の増大に伴い、
朝鮮人労働者の日本内地への移入政策を考え直すようになった。1930年代、日本ファシズム権力は
在日朝鮮人の民族運動をより苛酷に弾圧するとともに、民族的・階級的矛盾の激化を回避するために
「内鮮融和」「同化」政策を国家的見地から強力に打ち出した。

3.ヨボと朝鮮牛−飢餓移民

 ヨボについては、「??」のことをさす。

 この点について梶井渉は「ヨボ」は朝鮮語が「季刊三千里9号 1977春」(三千里社 1977 2刊)
において辞典を引用して、本来は、もしもしの略語、夫婦間で互いに呼び合う言葉であり、
多少卑語である。これを聞いて日本人は朝鮮人に対しヨボヨボということから、
朝鮮人の代名詞と考えるに至った。

 このように朝鮮人を蔑視する考え方は朝鮮を保護国化する中で、ますます強めていったものである。
韓国の保護国化と併合合邦政策の強行の結果の1つに朝鮮牛の話がある。

 朝鮮牛輸入を考えると、統計上は明治25年(1892)以降日本への朝鮮牛の年間輸出頭数は、
明治20年代には1000頭前後、30年代に5000頭、40年代に15000頭とのび、日韓合邦で急減し、
大正34年より再び増え、大正89年ごろより下関経由のみで年間4万頭をこしている。
その後大正11年ごろとか大正145年から2年にかけて減少したあと、昭和3年以降は増加している。

 朝鮮牛の増産は大正13年ごろより京畿、全北、慶北、平南、咸南を中心に展開している。
その後も畜牛の改良増殖ははかられ、後、朝鮮牛の他肉牛をかなり生産している。

 朝鮮農民に牛を使役させ犂を使用させることに農事改良をすすめることを1916年以来つづけ、
そのための授産補助事業をすすめ畜力耕をおしすすめる努力をしている。

 その結果、日本犂の比較的入ったのは慶南、忠清北道を除く南朝鮮と京畿、黄海道であった。
その他の地域は旧来(在来)犂をつかっている。それによって生産性が上がっても、収入増とは
ならず、かえって借金が増加し、土地を手放すことを余儀なくされている。

 その結果、朝鮮牛は朝鮮人より早く玄海灘の海を渡って日本へやって来て、役牛としてつかわれ
ている。これは労働力があって、山坂につよく、粗食に耐える牛であったことが大きい。
日本人の農業移民の成功は、次第に朝鮮人の小作人を転落させることとなった。

 こうした事態は、朝鮮人の有職者たちに、義兵運動の挫折やさらに31運動の挫折にもめげず、
三度も四度も蜂起その他へ誘う条件となったのである。

31独立運動、一視同仁、朝鮮語教育

日韓併合は、朝鮮を日本帝国の一部分としてあつかい、日本が朝鮮を統治するという差別図式を
確立させる中で、政治的独立力の弱いところと教え込んだ。これが前掲朝鮮蔑視観の形成とあい
まって朝鮮蔑視観を定着化した。

とくにそこで重視されるべきことがある。朝鮮人に対する教育での朝鮮語という言語教育の問題
である。日本は韓国を日韓併合をすると、その対等併合を無視し、一視同仁の名で日本語を国語
として強制している。

世界の影響を朝鮮半島はもろにうけ、キリスト教徒の独立運動が生じ、寺内内閣批判とくに武断政治、
憲兵政治批判が、31運動をきっかけにもり上がった。31運動も李太王高宗の死を引金とした
ものである。とくに宣教師の活動により国際的世論づくりも行なわれ、31運動の弾圧経過を示す
文書や証拠があかるみに出ている。行政当局の仏教=国教化は、その反発を招来している。

また朝鮮人の日本人へのつくりかえ、技術教育重視、朝鮮人には高等普通教育を委せないことなど
への反発、公立小学校における日本語の比重の増大、朝鮮文字以外の日本語によって教えられること
となり、朝鮮文字は一日おきに二回しかないことによって、朝鮮人の歴史を教えることを禁じ、
そのほこりを傷つけることとなっている。そのことと憲兵巡査政治に約13千人の朝鮮人を憲兵補、
巡査補としてサーベル政治をおこなった。

かくのごとき政治は朝鮮人のめぼしい人々はスパイ、探偵付とし、表面は同化をとくが内実的には
差別強化であり、韓民族無視政策である。そのくせ表面的には内鮮融和がとかれているが、その実は
内鮮人分離教育そのものであった。

ところで、日本の朝鮮の国語を日本語に強制する政策は全く成功していない。日本語を解する朝鮮人は
大正末には0.61%、大正12年末には4.08%、昭和8年末には7.81%、昭和13年末に12.38%、
18年末でも22.15%という具合である。これは、あきらかに日本の国語(日本語)化政策のあやまりを
示すものである。

その大きな原因は日本が朝鮮の民族教育の伝統を全く無視したことと加えて日本が日本と朝鮮の
文化交流の伝統、即ち朝鮮語=用書の歴史さえ忘れた政策をとったことにある。

朝鮮語学会事例とその社会的背景

朝鮮民族固有の言語使用の禁止と民族差別の徹底による事件としては、朝鮮語学会事件がある。

この事件は1942年(昭和)101日辞典編纂事業をおこなっていた朝鮮語学会メンバーが
「治安維持法中改正法律」(1941年)違反容疑で検挙され拷問の上有罪判決をうけた事件である。
この団体については、表面は文化運動の名のもとに朝鮮独立の実力養成団体であるとし、
朝鮮語文運動も朝鮮民心の機微にふれ、民族観念培養、民族文化の向上、民族意識のミ揚などを意図
してのもので、語文新聞らの支持をうけ朝鮮語辞典編纂、民族精神の高揚、独立意図をするものとし
ている。

1940年にはいわゆる創氏改名、神社参拝の強要、ハングル書籍禁止、東亜、朝鮮などの朝鮮語新聞の
廃刊という具合に、民族語圧殺の方向がすすんでいる。

したがって、朝鮮語学会事件は、起こるべくして起きた事件といってよい。独立運動のうたがいは
ともかく、民族運動への取り締まりはついに来るところまできたという感じを深くさせている。

むすびにかえて:(略)

25 平野桂介(1996)「言語政策としての多言語サービス」日本語学15-12 明治書院 pp.6572

目的:本稿では、まず国際化というコンテクストの中に多言語サービスを位置づける。
次に日本全国及び東京都の多言語サービスの展開を記述する。最後に多言語サービスの言語政策
としての特徴と今後の課題を明らかにする。

1.国際化と多言語サービスの理念

 多言語サービスは、国際化という社会の変化に対応するための言語政策として理解できる。
制度・ルールが外国人住民に対しても日本人住民と平等に適用されることが必要になるが、
情報が日本語によってのみ伝達されているかぎり、日本語を理解しない者にとってはその
情報は意味を持たない。したがって、外国人住民の理解可能な言語によって情報を伝達すること
が必要になってくる。これが多言語サービスの理念的な根拠である。

2.日本全国の自治体における多言語サービスの展開

 地方自治体による多言語サービスの実施が如実に見られるのが、多言語による生活相談窓口の
設置数の増加である。また、多言語サービスのための取り組みの一つとして、自治体職員の外国
語研修が挙げられるが、これに関してはすべての都道府県によって実施されている。以上のこと
から、外国人住民の増加が多言語サービスの実施を促し、80年代の後半から90年代の初めにかけて、
全国で実施されるようになったことがわかる。

3.東京都における多言語サービス

 東京都は、自治体の中で最も多くの外国人住民が生活しており、また最も多国籍化が進んでいる。
行政の窓口案内や日常生活に必要な暮らしの情報を提供するために、1986年英語版、1987年多国語
版の『Living in Tokyo』が発行された。そして相談窓口の設置の必要性が認識され、1988年に
「東京都外国人相談窓口」が開設された。80年代の終わりから90年代にかけて、医療・労働・防災等
の様々な領域において多様なサービス形態が見られた。

4.言語政策としての特徴

 従来の「国民国家型言語政策」と多言語サービスの言語政策の最も大きな違いは、言語政策が
誰のために行われるかという、対象者の違いである。多言語サービスを行うということは、一つの
社会の中に異なった多くの言語の話者がいるということを認めたうえで、不利益をこうむらない
ような言語のシステムを形成するという意義をもっている。

5.終わりに 多言語サービスの課題

 一つ目の課題は、多言語サービスをより充実させていくための条件を整備することである。
従来の外国語教育は学術や文化の取り入れという趣旨が強かったが、今後は外国人住民との
コミュニケーションのために、専門的な翻訳者・通訳者を養成する必要がある。もう一つの課題は
、多言語サービスの概念と実践をより拡張していくことである。学校での母語教育、エスニック・
メディアへの援助、図書館の蔵書の多言語化が挙げられる。